Safariを見ていたら突然「あなたのiPhoneはウイルスに感染しました」と赤い画面が出て、心臓が止まりかけた。親から「iPhoneにもウイルス対策アプリを入れたほうがいいの?」と聞かれて答えに困った。中古で買ったiPhoneに前の持ち主の「何か」が残っていないか気になる。iPhoneのウイルス対策を調べ始める入口は、だいたいこの3つのどれかです。結論を先に言うと、パソコンで言う「ウイルス」がiPhoneに勝手に入って動き出すことは、仕組み上ほぼ起こりません。ただし、人をだまして情報やお金を取る手口は別物で、こちらはiPhoneでも毎日のように起きています。何が本当の脅威で、何を気にしなくていいのか、場面ごとに整理していきます。
iPhoneがウイルスに「かかりにくい」のは性能ではなく仕組みの話
iPhoneで従来型のウイルスが広がりにくい理由は、Appleが公開している「Appleプラットフォームセキュリティ」の資料に沿って言うと、大きく3つに整理できます。
- アプリは1つずつ隔離されている(サンドボックス)。 あるアプリが別のアプリのデータや、システムの中枢に手を伸ばすことができません。仮に悪意のあるアプリが入っても、できることが狭い箱の中に限られます。
- 入手経路がApp Storeに絞られている。 配信前にAppleの審査を通り、開発者の署名が付いたアプリしか原則として動きません。パソコンのように「ダウンロードした実行ファイルを開いたら感染」という経路が、そもそも用意されていません。
- 穴が見つかればiOSのアップデートで塞がれる。 ソフトウェアに弱点がゼロということはなく、Appleも定期的に「悪用された可能性がある」脆弱性を修正しています。つまり、更新を当て続けることが対策の土台です。
この3つ目が、ウイルス対策アプリより先に見直したい点です。古いiOSのまま使い続けると、すでに公表されている弱点が放置された状態になります。「更新したら不具合が出そうで怖い」という人は、入れるタイミングの考え方をiPhoneのアップデートはすべきかの判断基準で確認しておくと、見送る・待つの線引きがはっきりします。
「ウイルスに感染しました」の警告が出たときの正体
Safariでサイトを見ている最中に、警告音とともに「iPhoneがウイルスに感染しました」「今すぐ対処しないとデータが消えます」といった画面が出る。カウントダウンが始まり、「修復する」「アプリをインストール」「サポートに電話」といったボタンが並ぶ。これはウイルスではなく、広告の形で表示される偽の警告です。iOSには、Webページがシステムをスキャンして感染を検出する機能はありませんから、Webページ上に出る「検出しました」はすべて作り物と考えて差し支えありません。
目的は3つのどれかです。有料アプリやサブスクリプションに誘導する、電話をかけさせて遠隔操作や料金を要求する、カレンダーや通知の購読を許可させて延々と広告を送り続ける。画面が本物らしく見えても、押さなければ何も起きません。
注意
偽警告の画面にある「OK」「閉じる」ボタンも、押すと別のページへ飛ぶ仕掛けになっていることがあります。閉じるときはボタンではなく、Safariのタブ一覧から該当タブを消してください。表示されていた電話番号には絶対にかけないでください。
すでに閉じたあとで不安が残る場合は、「設定」→「アプリ」→「Safari」→「履歴とWebサイトデータを消去」で、そのサイトが残した情報を一度きれいにしておけば十分です。アプリを何も入れていなければ、端末側に残るものはありません。
iPhoneで実際に起きているトラブルは「ウイルス」ではなく、この4種類
fab mobileに寄せられる相談でも、「ウイルスにやられた」という言葉の中身を聞いていくと、ほぼ次の4つのどれかに当たります。いずれも、プログラムが勝手に動いたのではなく、本人の操作を引き出す手口です。
| 手口 | 入口 | 見分け方 | 先にやること |
|---|---|---|---|
| フィッシング | 宅配の不在通知・キャリア・Apple・銀行を名乗るSMSやメール | リンク先のURLが公式ドメインと違う。急がせる文面。個人情報やカード番号の入力を求める | リンクは開かず、公式アプリや公式サイトから直接確認する |
| カレンダースパム | 「あなたは当選しました」などの予定が勝手に増える | 身に覚えのないカレンダーの購読(照会カレンダー)が追加されている | 「カレンダー」アプリ下部の「カレンダー」から、見知らぬ照会カレンダーを削除 |
| 構成プロファイル・偽アプリ | 「動画を見るにはプロファイルをインストール」などの誘導 | 「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」に見覚えのない項目がある | プロファイルを削除。入れたアプリも削除 |
| Appleアカウントの乗っ取り | 他サービスから漏れたパスワードの使い回し | 知らない端末からのサインイン通知。身に覚えのない購入メール | パスワードを変更し、2ファクタ認証をオンにする |
とくに最初のフィッシングは、iPhoneの性能や設定とは無関係に、人がリンクを押した時点で成立します。総務省の国民のためのサイバーセキュリティサイトでも、スマートフォン利用者向けに手口と対処が整理されています。「iPhoneだから大丈夫」と思っている人ほど、偽SMSのリンクを無警戒に開きがちなので、家族と一緒に一度は眺めておきたい内容です。
すでにパスワードを入力してしまった、プロファイルを入れてしまった、という場合も、落ち着いて削除とパスワード変更をすれば大半は止まります。それでも不審な挙動が続くときの最終手段は端末の消去です。遠隔での消去を含めた手順は、iPhoneの消去方法を目的別にまとめた記事で確認できます。
ウイルス対策アプリはiPhoneに入れるべき?できること・できないこと
App Storeで「ウイルス対策」と検索するといくつもアプリが出てきますが、先に述べたサンドボックスの仕組みは対策アプリ自身にも適用されます。つまりiPhone上の他のアプリの中身をスキャンすることは、対策アプリにもできません。パソコン用ソフトのような「全体スキャン」は、iOSでは実現できない機能です。
では何をしているのかというと、主に次の範囲です。
- 危険と報告されているサイトへのアクセスをブロックする(Webフィルタ)
- 接続しているWi-Fiの暗号化状態や、同一ネットワーク上の怪しい挙動を知らせる
- VPNで通信を暗号化する
- メールアドレスやパスワードの漏えいを監視して通知する
- 家族の端末の利用状況を管理する(ペアレンタルコントロール)
このうち危険サイトの警告は、Safariに標準で入っている「詐欺Webサイトの警告」とかなり重なります。パスワードの漏えい通知も、iOS標準の「パスワード」アプリが「セキュリティ」の項目で知らせてくれます。追加費用をかけるかどうかは、「標準機能で足りるか」ではなく、「VPNや家族管理など、標準にない機能を使いたいか」で判断するのが現実的です。入れること自体に害はありませんが、入れたからといってフィッシングのリンクを押しても安全になるわけではない、という点だけは押さえておきたいところです。
今日10分でやっておきたいウイルス対策5つ
アプリを入れる前に、iPhoneに最初から用意されている機能をオンにしておくだけで、上で挙げた4種類の手口の大半は入口で止まります。設定箇所と一緒に順番に並べます。
- iOSを最新にして、自動アップデートをオンにする。 「設定」→「一般」→「ソフトウェアアップデート」→「自動アップデート」。セキュリティ修正だけを先に当てたい場合は「セキュリティ対応とシステムファイル」もオンにしておくと、本体の大型更新を待たずに弱点が塞がれます。
- Safariの「詐欺Webサイトの警告」と「ポップアップブロック」をオンにする。 「設定」→「アプリ」→「Safari」。偽警告の表示そのものを減らせます。
- メッセージの「不明な差出人をフィルタ」をオンにする。 「設定」→「アプリ」→「メッセージ」。連絡先に無い番号からのSMSが別の一覧に分けられ、宅配や銀行を装うSMSを本物と混ぜて見なくなります。
- Appleアカウントの2ファクタ認証をオンにし、使い回しているパスワードを変える。 「設定」→「自分の名前」→「サインインとセキュリティ」。「パスワード」アプリの「セキュリティ」に、使い回しや漏えいの疑いがある項目が一覧で出ます。
- 「VPNとデバイス管理」に知らないプロファイルが無いか見る。 「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」。何も表示されなければ正常です。見覚えのないものがあれば削除します。
5つのうち4番目までは、端末を落としたときや覗き見への備えとも重なります。パスコードの桁数や「盗難デバイスの保護」など、ウイルス以外の守りも含めて優先順に見直したい人は、iPhoneのセキュリティ設定を優先順に並べた記事のほうが全体を一度に確認できます。
ここがポイント
iPhoneには「ロックダウンモード」という、標的型の攻撃に備えてWebや添付ファイルの機能を大きく絞る設定もあります。ただし一般の利用では不便が大きく、通常のウイルス対策として常用するものではありません。「設定にあるからオンにしたほうがいい」というものではない、と知っておくだけで十分です。
中古iPhoneは大丈夫?前の持ち主の「残り物」で本当に気にすべきもの
中古で買ったiPhoneに「前の持ち主が入れたウイルスが残っていないか」と心配する声は多いのですが、正しく初期化された端末であれば、この心配はほぼ要りません。iPhoneの「すべてのコンテンツと設定を消去」は、データを暗号化していた鍵そのものを破棄する方式なので、前の持ち主のアプリやデータが端末に残る余地がないからです。
一方で、初期化しても残りうるもの、あるいは初期化がきちんと行われていないと残るものはあります。fab mobileの検品では、ウイルスの有無を調べるのではなく、次の点を1台ずつ確認しています。
- アクティベーションロックが外れているか。 前の持ち主のAppleアカウントが紐づいたままだと、初期設定でそのパスワードを求められて先に進めません。
- 監視対象(MDM)の登録が残っていないか。 法人で使われていた端末は、初期化しても管理サーバーへの登録が残り、起動時に管理用プロファイルが自動で入ることがあります。「VPNとデバイス管理」に消せない項目が出るのはこのケースです。
- 改造(ジェイルブレイク)の痕跡が無いか。 正規の手順で初期化・復元した端末では解消されますが、見慣れないアプリやApp Store外の配信元が残っていないかは、起動後の画面で確認します。
販売店で買う場合はこうした確認が済んでいる前提で選べますが、フリマアプリや個人間の取引では、届いた直後に自分で同じ項目を見ることになります。初期設定の画面で見知らぬアカウントのパスワードを聞かれたら、その時点で出品者に連絡してください。取引前に確認しておきたい点は、中古iPhoneをフリマで安全に買うためのチェックリストにまとめています。
まとめ
- iPhoneは隔離・審査・更新の仕組みで、従来型のウイルスが勝手に入って動くことはほぼ起こりません。土台はiOSを最新に保つことです。
- Web上に出る「ウイルスに感染しました」は広告の形をした偽警告です。ボタンを押さず、タブを閉じて履歴とWebサイトデータを消去すれば足ります。
- 実際の被害はフィッシングSMS、カレンダースパム、構成プロファイル、アカウント乗っ取りの4種類で、いずれも「本人に操作させる」手口です。
- ウイルス対策アプリは他アプリをスキャンできません。危険サイト警告や漏えい通知はiOS標準機能でも代替でき、VPNや家族管理が要るかで判断します。
- 中古iPhoneは正しく初期化されていれば前の持ち主の残り物は残りません。見るべきはアクティベーションロックと管理プロファイルです。
fab mobile
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